おしごとナビ大田区 大田区企業の人材確保を支援します

2008年09月19日(金)

おばあちゃんたちの葉っぱビジネス Part.1 [コラム]

財団法人大田区産業振興協会 専務理事 山田伸顯

画像(260x195)

山間の上勝町

 徳島市の中心から車で山あいに向かって約1時間のところに、上勝町という限界集落がある。限界集落とは65歳以上の高齢者の比率がその地域で総人口の50%を超え、地域が将来存続できるか危ぶまれるところを言う。2008年8月現在、上勝町の総人口は2,016人、その内65歳以上の人口は989人で高齢化比率49.06は県下一であり、今まさに限界集落に当てはまるところである。

画像(260x195)

町立月ヶ谷温泉

 しかし、いったんこの村(町)に入ると、そこにはゴミひとつないきれいな村落が現れ、軽トラックを運転するおじいちゃんと、せっせと葉っぱを集めて農協に集荷にくるおばあちゃんの姿を見ることができる。おばあちゃんが稼いだお金で、孫のために家を新築し、そこにUターンしてくる若い世代が住み着いている。そう、ここは葉っぱビジネスで財をなした町なのだ。
 この夏、葉っぱビジネスで著名となった上勝町に行き、農家やゴミステーションの現地視察をセットにしたセミナーに参加した。一人一泊二食付きで参加費は3万円である。町の第3セクターである株式会社「いろどり」が企画したセミナーで、町立の月ヶ谷温泉「月の宿」がセミナー会場と宿泊施設となっている。セミナーもビジネスとして提供しているのである。

画像(260x195)

(株)いろどりで執務中の横石氏

 このビジネスの仕掛け人は、現在株式会社「いろどり」の代表取締役(副社長)(社長は上勝町長)の横石知二氏である。横石氏は、2007年7月ニューズウィークの「世界を変える社会起業家100人」に選ばれている。
 農業大学校を卒業した横石知二氏は、昭和54年(1979年)に二十歳で営農指導員として上勝町農協に就職した。初めて行って驚いたことに、農業を営んでいるはずの男たちは、朝から農協や役場に来ては酒を飲んでくだを巻き、女たちは他人の噂話か悪口を言って憂さを晴らしているような町だった。横石さんには、補助金をいくら取ってこられるのかという要求を吹っ掛けて、それによって人を値踏みする態度に終始していた。

 横石さんが自力の農業を訴えても、よそものに何が分かるか、出て行けとさえ言われる有様だった。しかし、それにもめげず、みかんの栽培で農家の収入を増やす努力をして、少しずつ改善の兆しが見え始めたところに、これまで経験したことのない冷害に見舞われ、みかん農業が壊滅的な打撃を受けてしまった。
 この町には何にも資源がないように見えるが、何かないのかと自問自答する日々が続いた。
 ある時、出張の帰り立ち寄ったがんこ寿司で、隣の席にいた若い美人に見とれるうち、彼女たちが寿司のツマに添えられていた紅葉の葉っぱを、きれいと言って真新しいハンカチの中に大切そうにしまって帰って行った。その光景から、こんな葉っぱが大事にされるのかと驚くとともに、これは上勝町にとってビジネスになると直感した。
 それからが横石さんにとって本当の闘いとなった。
 町に戻って農家の人に話すと、「葉っぱをお金にするなんて、タヌキでもあるまいし」、「落ちているものを拾ってまでお金にするような卑しいまねはできない」というもっともな反応が返ってきた。「もっと真面目にやりな」と忠告されもした。

 しかし、自分の確信に揺るぎはなかった。少数だが協力してくれるおばあちゃんが現れて、庭に生えている木の葉っぱを集めてくれたので、それを日本料理屋に持ち込んでみた。全く相手にされるどころか、水を掛けられて追い返される羽目になった。
 その後も、何度も料亭の裏木戸を訪ねたが、同じことだった。
 ところが、あるときお客として行けば良いとアドバイスされ、金を工面して表から入ると、今度は手のひらを返したように、丁寧なもてなしを受けた。
 どのように料理に葉っぱが使われるのか、料亭通いを重ねながら、一生懸命見聞きして勉強した。料亭で支払う金は万単位である。奥さんから自分の給料は家に入れなくて良いと言われたので、全て飲食に費やしたのだ。お陰で、肥満体となって痛風に悩まされ、とうとう立ち上がることができないところまでになってしまった。まさに家庭を犠牲にして、体を張って情報収集に掛けたのである。

 こうした努力がやっと実って、どういう葉っぱを集め、どのようなルートに売り込むかを会得することができた。市場に受け入れられるようになったのである。
 それまで料理屋では、庭に木を植えて葉っぱを採ったり、近所に生えているものを集めたりしていたのだ。市場にツマに利用できる葉っぱが出回るようになると、板前はこれを使うようになった。自分で手配する必要がなくなって、はるかに便利になったからである。

※続きは9/26(金)アップ予定です。

■参考図書「そうだ、葉っぱを売ろう―過疎の町、どん底からの再生」
・著者:横石知二
・発行所:ソフトバンククリエイティブ

Posted by column at 10時34分

ページのトップへ ページのトップへ

最近の記事

<バックナンバーを読む>

リンク集

検索


カレンダー

9

2008


  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        

カテゴリーリスト

RSS1.0

[Login]


powered by a-blog
Copyright © Ota City Industrial Promotion Organization All right reserved.